第5章 秘めた想い
「…」
『…』
二人して宇野のカードを見つめながら向かい合わせで座る
部屋には床にカードを置く音と時計の秒針の音だけが響いていた
「…」
『…』
「宇野。」
『ぬあ!!』
「終わっちまった…」
『ま、また負けた!高杉ズルしてるでしょ!』
「オメーが弱ェんだろ」
そう言って欠伸をする高杉を軽く睨む
ていうか2人で宇野って…。
「そういえば煩くて無駄にイケメンな兄貴はどうしたんだよ」
『あー、歩兄は夜勤のバイトだからいないよ』
そう言うと高杉は一瞬何か考える素振りを見せるとそのまま私を指さした
「んじゃ次、負けた方は勝った方の飯作る。な」
『ぇえ!?』
ただでさえバイトで疲れてるのに何で高杉の晩御飯まで作らなきゃならないんだ!
『高杉…まだご飯食べてなかったの?』
「あぁ…さっきまでアホのライブに付き合わされてたからな。終わったら本人はすぐ帰りやがった…全くマイペースな野郎だ」
『アホって…神威くんのこと?』
「…ま、あいつ以上のアホはいねーだろうな」
『そういえば神威くんって…何となく神楽ちゃんに似てるよね。顔とか髪色とか!』
「兄妹だからな」
『…え。』
サラッと衝撃的なことを言った高杉を宇野のカードを配る手を止め私は驚いて見つめた
「お前…聞いてなかったのかよ」
『ぇえええええ!!?』
な、なんという偶然!ていうかなんて狭い世間なの!?
カードを全て配り終え、お互い向き合う
「んなことよりお前…今度の銀八会出んのか?」
『うん、勿論!だって久しぶりにみんなに会えるし』
「…」
『高杉は?』
「俺ァ…まあ大学の奴らと約束が…」
『え、行こうよ高杉!』
前のめりになって顔を近づける私を高杉は驚いて見つめた
『ほら高校の時、高杉とよく一緒にいたあの人達も参加するみたいだし!大勢の方が楽しいって!!』
そう言って笑うと、高杉も薄らと笑みを浮かべた
高杉…こんな顔もするんだ…。
滅多に見れない彼の表情にぼーっと見惚れていると、
「…宇野」
『あ。』
高杉の晩御飯を作ることになってしまった