第3章 好きな人
「吉野、やる」
『えっ…』
焼きそばの次に沖田が私に渡したのはりんご飴だった
「さっきここ来るとき見つけたからついでに買ったんでィ」
『あ、ありがとう』
私は沖田から貰ったりんご飴を見つめ言った
『何か…私ばっかり貰っちゃってるね』
「気にすんな、今日誘ったの俺だしねィ」
『で、でも…』
「それにお前…甘いモン好きだろィ?」
そう言って微笑む沖田の顔が愛しくて、
でも上手く言葉に出来ないこの気持ちがとても もどかしくて、切ない。
『うん…大好き…』
だからどさくさに紛れた"好き"も彼の袖を
ぎゅっと掴むことも私が今できる精一杯の想いだった
あぁ…きっと今、私の顔は真っ赤に違いない。
沖田の顔を見ることが出来ないため、彼がどんな顔をしているのかもわからない
「もうすぐ花火上がるぜィ」
『えっ』
顔を上げた瞬間沖田は私の手を握った
『ッ…』
「浜辺…いくか」
そう言って微笑む沖田を見つめ、そっと彼の手を握り返した
『うん…』
それはいつかの時を思い出す。