第2章 変わらないもの。
「…そうじゃねぇと困る」
そう優しく微笑む沖田に見惚れていると気づいたときには沖田の顔が目の前にあって
そのまま私の頬にそっとキスをした。
それは本当に一瞬で、だけどとても優しく触れた
『…』
呆然と立つ私は沖田にデコピンを食らい我にかえった
「いつまで突っ立ってんでィ」
『え…は、え?、』
い、今の…って、え?
お、沖田が…き、き、
『えええええええええッ!!?』
「うるせぇな」
『だってい、今っ!』
沖田は動揺を隠しきれない私を見つめ溜息をついた
「頬ぐれぇで何赤くなってんでィ」
『な、ち、違っ!…』
「口にするとでも思ったのかィ?」
『お、思ってないし!沖田のバーカ』
時折、沖田が見せる無邪気な顔や優しさが何だかいつもより格好よく見えた
「何怒ってんでィ」
『怒ってない!悔しいだけ』
「…悔しい?」
『沖田はこういうの慣れてるかもしれないけど私は男の人とお付きあいすること自体初めてだし…何か、悔しい』
私の言葉に沖田はその場でしゃがみ頭を押さえた
『お、沖田?』
「慣れてねぇし…」
『え?』
「オメーといると心臓がいくつあっても足りねーや」
『は?…そんな驚くことあった?』
沖田はやれやれといった顔で私を見つめた
「…ほら行くぜィ鈍感女」
ど、鈍感!?
先を歩く沖田の後をついて行くといつの間にか私が来た道に戻っていた
『あれ?ここ駅だよ…何で…』
「今日はもう遅ェから帰れ」
『でも…え!?で、デートは?』
「じゃーな」
ちょっとおおお!!?
帰りの切符を渡され半ば強制的に改札を通された
え、そんな!今私思いっきりデート気分だったのに!
「跳ねられんじゃねーぞ」
そう不吉な言葉を残し改札の向こう側に立つ沖田を軽く睨んだ
そのままホームへ歩く。
何か虚しい…私何しに来たんだっけ?
やっぱり私と沖田には温度差があるのかも…。
「吉野!」
突然名前を呼ばれ振り向く
「お前…再来週暇かィ?」
『え?…多分、どうして?』
「再来週の土曜日、夏祭りがあるんでィ」
『え…』
「そんときに…ちゃんとデートしてェんだけど」
『ッ』
「何泣いてんでィ」
『泣いて、ない!…』
そっか…ちゃんと沖田なりに考えてくれてたんだ。