第1章 きっかけはスカウト
「いっそのこと、僕のお嫁さんになる?」
「へ」
冗談には聞こえないトーンで。
低くて甘くて…声優さんにも負けない声音で。
「じょ、冗談ですよね…っ」
それか私の聞き間違いか、なにか。
五条先生がそんなことを言うわけなんて……
「寧々は僕の妻になって、僕を癒してほしい。これは寧々にしか出来ないことだよ」
言うわけが…あった。
さも当然のように言ってのけた。
「ごじょ…っ」
「階級なんて取り払った、僕のたった一人の愛する妻にならない?」
「…えっ」
一人しかいない存在なら、2級も3級も関係ない。
順位付けや格付けといった縛りはない。
だけど、だけど、だけど…!
「どう?揺らいでる?」
「な、内緒…ですっ!!」
全く毛色の違う第3の選択肢に、心がドキドキ波打ってうるさい。
顔も真っ赤に染まって、五条先生はそんな私の頬をつねった。
「僕は寧々が好きだよ」
「こ、これは夢…っ!」
「夢じゃないよ。だって…ほっぺ痛いでしょ」