第1章 きっかけはスカウト
「あなたの声に光るものを感じました」
どす黒い呪いを扱う私に対する衝撃的な言葉。
名刺を渡され、すぐ近くの事務所で話を聞いてほしいという彼に
「雨宿りがしたいので」
と疑いはかけたまま、着いていった。
結果として、詐欺でもなんでもなく声優としてスカウトしたいという話は本当だった。
所属するにあたってお金が掛かるなどもなく、レッスン料を負担するから技術を磨いてデビューしてもらいたい…と。
最大手の事務所だけあって、所属しているのも人気実力ともにトップクラスの声優さん達。
その中の何人かが業界の先輩として、顔を出してくれた。
もちろん私は興奮しっぱなしで、憧れの声優さん達に鼻息が荒くなった。
その時点ではもう疑いの気持ちは晴れ、声優としての道に興味が揺らいでいた。
でも…私は呪術師だ。
呪いを祓うことを学んできた人間だ。
それが突然、声優に方向転換します…だなんて、今まで関わってくれた人達に申し訳ない。
…けど、けど…!
揺らいでしまう…!だってオタクだもの…!
見守るだけのオタクではいられないの…!
私も憧れの声優になってみたいと思う方のオタクなの…!!