第1章 きっかけはスカウト
何がどうなってか、呪いが解けたのか、大手事務所の所属オーディション…その最終審査まで進んだ。
周りには声優の専門学校を卒業した人や、フリーで活躍しているプロなど…未経験の初心者は私だけだった。
そんな中…受かるはずはなかった。
当然のように落ちた。
それでも最終審査まで進んだことは、私にとって誇りとなり自信となった。
「五条先生、オーディションやっぱり落ちちゃいました」
任務から帰る途中に不合格の連絡を受けた私は、その旨を担任の五条先生に報告した。
「悔いはない?」
そう聞かれて
「全くないです。声優さんは神で、私は凡人でした」
全てを吹っ切って思い出を作った後に、翌日の卒業式に備えることにした。
電話を切って、高専へ戻ろうと帰路を急いだ。
スカウトされたのはその時だった。
雨が降りそうで、小走りになった私を呼び止めたのは業界最大手の声優事務所…そのスカウトマンを名乗る人物。
怪しくて、嘘くさくて、そういった詐欺だろうと穿った見方をした。
それは対応にも表れていて、お世辞にも優しく話を聞いた記憶はない。