第1章 きっかけはスカウト
アニメオタクなのは変わらないどころか、更にのめり込んでいた。
アニメのキャラに命を吹き込む声優さんに強く興味を持ち、「あ、このキャラの声優さんって…!」など誰の声だか聞き分けられるくらいになった。
アニメ化が発表された作品のキャスト予想をしたり、声優さんの登壇するイベントに行ったりもした。
アニメオタクと声優オタクを兼ねた私の日常は、大いに充実していた。
呪術師とオタ活を両立する日々。
でも今日で高専を卒業する。
呪術師として働くようになるまでは、1年間空けることが通例となっている。
これから1年間、呪術師として生きる覚悟と方針を決める…はずなのに…!
「五条先生、私どうしたら…」
「僕としては迷わないでほしいところなんだけどな」
「でも…っ、ずっと憧れてたんです!!」
人生で2回目のスカウトは、卒業式の前日…昨日のこと。
学生時代最後の思い出作りと思って、勢いで応募した声優オーディション。
ダメで元々、落ちることによって、より声優さんの凄さと有り難みを実感したい。
でも…私が憧れにどこまで近づけるのかを知る目的もあった。