第1章 きっかけはスカウト
人生でスカウトされたことは2回ある。
1つは高校受験に失敗して、滑り止めにも落ちた馬鹿な中学3年生の頃。
「キミには呪いが掛かってる。その呪いを解きたければ、呪術高専においで」
自称グッドルッキングガイの五条先生に誘われて、見ず知らずの世界へ踏み出した。
アニメオタクで受験勉強を何一つせず、結果も出せずにいた私には、進学できるというだけで有り難かった。
同級生の虎杖くん、伏黒くん、野薔薇ちゃんと一緒に学んだ高専生活はとても楽しかった。
強くて優しい先輩達と賑やかな京都校の人。
先輩達が一人前の呪術師として活躍していく背中を追って、がむしゃらに頑張ってきた。
才能は…あんまりなかった。
3級止まりで、難しい任務は務まらなかった。
それでも呪いを知って、祓うことを知って、世の中の役に立つことを知った。
やり甲斐はある。
息抜き程度にアニメは観ていたけど。
……い、息抜きは嘘。
五条先生に呆れられるくらい、暇さえあればガッツリ観てた。
「寧々はアニメのキャラクター以外は好きにならないの?」
「恋愛対象は二次元のイケメンなので!」
「三次元のイケメンがすぐ傍にいるでしょ」
……なーんて、やり取りもしたくらい。
夕方のリアルタイム視聴を逃したくなくて、任務を急いで片付けたこともあったな。