第1章 enrollment
『朝ご飯何だろうねー』
「ツナマヨの、おにぎり!」
『棘はツナマヨ好きだねぇ』
「うん!」
ワンピースになっている制服に着替えると、棘の服も着替えさせていく。
棘に制服はないので、棘のご両親から預かったものだ。あと、ネックウォーマーも。
これ、マスクとかにした方が良いかな?夏は暑いだろうし。
入学してから1週間。
棘もだいぶ寮生活に慣れてくれたみたいで少し肩の荷が降りたような気がする。
ただ1つ、気になっていることが…
7:30を指す時計を見て、棘と顔を見合わせる。
まだ時計が読めない棘も、時計の針の角度を覚えているようで、ソワソワしている。
コンコンコン
「ごじょーだ!!」
『は、はーい』
急いで扉を開くと、やはりそこには五条君がいて…
「おはよ」
『おはよう五条君…ほら、棘も行こ?』
眩しいくらいの白髪を揺らして、当たり前のように棘を抱き上げる五条君。
初日に私の胸を覗き込んだあの五条君とは思えない行動に、1週間経ってもまだ慣れずに、歩き始めるのが1歩遅れてしまう。
『五条君。私、もう高専に慣れてきたし、朝のお迎えは大丈夫だよ?』
「…あ?なんか言ったか?」
『えぇ、絶対聞こえてたよね』
「ごじょー、明日からお迎え来ないの?ごじょーの抱っこのが好き!」
「来るよ?俺のがかぐらの抱っこより高いもんなぁ?」
そう、サングラスの隙間から勝ち誇ったように私を覗き込む五条君と、楽しそうにはしゃぐ棘に心をグサリと刺されたような気がして少し肩が持ち上がる。
初日に五条君に呪言飛ばしてたのに、なんでこんなに懐いてるの!?
少し寂しいような嬉しいような複雑な気持ちを抱えながら、五条君の隣に並べるように小走りする。
どうして毎朝来てくれるんだろう?
棘のこと気遣ってくれてる、のかな…
「棘は俺の抱っこが好きだし、俺は朝イチにかぐらに会えるし、ウィンウィンだろ?」
『え…え?』
「棘、食堂まで競争しようぜ」
「うん!【走る】!」
『へ?ちょ、ちょっと、待って!』
私の言葉を無視して走り始める2人に、取り残された私は1人で目を見開く。
それって…
五条君は私に朝1番に会いたい、ってこと?
えっと、そ、そそそんなこと、ある…?