第1章 enrollment
あはははと笑いながらも呪術界の狭さを実感し、少し怖くなる。
両親が駆け落ちだったためか、両親が呪術師として働くことを拒んだ人達だったからか、物心つく前から私は、狗巻家本家から遠い場所に住んでいた。
呪力の使い方は両親に教わっていたため、コントロールは出来ていたが、術師という職業があることすら2年前まで知らなかった程に、私は呪術界のことを何も知らされていなかったのだ。
「呪術界には御三家っていうのがあって、加茂、五条、禅院がそれにあたんの。で、かぐらが結婚を申し込まれてるのが、その内の禅院ね。
俺は、その内の五条悟ってワケ。分かった?」
『ご、五条君、お坊ちゃんだったんだ…ちょっと納得かも』
「ソレ、どういう意味?」
『な、何でもない!
いや、その…だからって、なんで私が五条君に呪言使うの?』
「ホンモノ体験してみてぇじゃん」
『棘のは偽物ってわけじゃ…』
ケラケラ笑いながらも"良いじゃんちょっとくらい"と軽い言葉を吐きながらも、私から目を離すことはしないというこの隙の無さにだんだん恐怖を覚えてくる。
というか、私が結婚申し込まれてる事も知れ渡ってるんだ。
それって凄い、嫌だな…
「あ!え!?そういう!?」
『へ?な、なにが…?』
「顔隠れてたから詳しく見えなかったケド…
かぐらの反転術式って口の中でしか使えねぇの?
自分を治すためには1回誰かとキスすんの?」
『!!!…ほ、本当に、全部分かるんだね。
…この、蒼い目が、六眼?…凄い綺麗』
吸い込まれるように、五条君のサングラスを少しずらして"六眼"を覗き見る。
数秒が経過して、五条君の片手が私の肩を抑え、もう片方の手が私の目元を覆い視界が真っ暗になる。
「見過ぎ」
『ご、ごめん、つい…手、離して?』
「しばらく待って」
『は、はい』
綺麗すぎてずっと見ちゃってた…人の目なのに。
よく考えれば、人のサングラスをずらすって、私、凄い失礼な事しちゃったかも。
罪悪感で言われた通り動かないで、少し熱い五条君の手を振り払わないで待つことにする。
な、長いなぁ…
「あれ?五条とかぐら?」
「おや、どういう状況かな?これは」