第1章 enrollment
『ひぁっ!』
突然、頬に冷たい何かを押し当てられて身体がビクリと揺れる。
「ははっ、オツカレサマー。俺に10連敗のかぐらサン」
『!!びっくりしたぁ。
えっと、これ、くれるの?』
「やるよ。入学祝い」
『あ、ありがと』
体術の授業(私が五条君と夏油君に20連敗してしまった)が終わり、棘を迎えに行く前に休んでいたところに、五条君に後ろから頬に冷たい缶ジュースを押し当てられたのだ。
やっぱり私、負けすぎ…?
意地悪だったり、優しかったり、怖かったりする五条君の事はやっぱり分からないまま。
自然と隣に腰掛けて、私にくれたものと同じ缶ジュースを開けると、美味しそうに飲み干している。
…こういう姿は可愛いな。
「飲まねーの?」
『い、いただきます』
慌てて自分も缶の蓋を開こうとするが、手が滑ってなかなか開けられない。
〜〜〜!!
1人でもたもたしていれば、隣の五条君が黙って私の缶ジュースの蓋を開けて渡してくれて、じーっと顔を見つめられる。
の、飲めってこと…?
口周りの紋様を隠していたネックウォーマーを下げると、一口飲んでから、五条君の方を向く。
『な、何から何まで、ありがとう…』
お礼を言い終えてもなお、彼はまだ私の顔を見続けていて、なんだか気まずい。
な、何か…会話!!
そう思っていれば、突然五条君が口を開いて、
「なぁ、かぐらも呪言使えるんだよな?
さっきの棘みたいに、俺に使ってみろよ」
『なっ、に言って…』
「俺のが格上だから喉潰れるだろうけど、治せるだろ?」
『えっと…自分のは、治せないの』
「そう?俺"目"良いから、それが嘘だって分かるけど?」
口角を上げて、見下すように言う彼の言葉に、冷たい汗が背中に流れる。
"目"って、何…?
私の術式が分かるって、こと?
「知らねぇの?
俺、五条家の跡取り息子で、久々に産まれた六眼なんだけど?」
『りく、がん?…私、呪術界とは最近まで関わってなくて』
「あぁ、やっぱ?
…禅院家が血眼になって探しても見つけられなかったっていうウワサは本当だったんだ」
『あ、はは…2年前に、見つかっちゃったけどね』