第1章 enrollment
夏油君が教えてくれた五条悟という名の彼の方を向けば、相変わらず棘を膝の上に向き合うように乗せ、少し苛立ったような態度ながらも棘の遊びに付き合ってくれている。
この人も意外と優しいのかな。
彼の髪で遊び始めた棘の両手を後ろから軽く掴んで制止する。
『棘、悪戯はおしまい!ね?』
「うー、分かった」
『棘は偉いねぇ、ふふ』
「なぁ?俺も偉くね?」
!!
前屈みで棘の手を掴んでいたためか、思っていたよりもすぐ近くに五条君の顔があり目を見開いた。
口角を上げ、サングラスの奥の綺麗すぎる目を細めて楽しそうにしている。
『う、うん?…ありがとう、棘の相手をしてくれて』
「どーいたしまして。じゃあお礼はコレで」
『え…?』
お礼を言った後、少し離れようとすれば、彼の手が私の胸元に伸びてきて…
気付けば、私の胸元が開いた制服の谷間の部分に、彼の指が引っ掛かっていたのだ。
胸元がさらに見えるように下に引っ張られ、前屈みになっていた私の胸は五条君に丸見えになってしまう。
「えっろ」
『きゃっ…!』
な、なにしてるのこの人!?
反射的に棘の腕を掴んでいた手を離して後退りしてしまう。
「えー?別に良くね?減るもんじゃねぇし」
『へ、減る!良くない!』
棘を抱っこしたまま席を立ち上がった彼は、そう恥ずかしさでどうにかなりそうな私にどんどん近付いてくる。
本当に、どういう神経!?
私、会ったばかりのクラスメイトだよ!?
おそらくブラジャーごと見られてしまった胸を両手で力無く隠して、睨みあげれば、
刹那
「【動くな】」
ピタリと動かなくなる五条君。
五条君の腕に抱っこされながらも息切れしている棘を見つけて、悲鳴をあげそうになった。
あれ五条君もしかして、脳を呪力で覆っていない…?
『と、棘?』
「かぐら、ちゃん、ケホッ……だい、じょうぶ?」
『棘?喉痛いの?こっちおいで、治してあげるから。
私を助けようとしてくれたんだね、ありがとう』
ぴょんっと彼の腕から飛び降りた棘は、私の元に小走りで駆け寄ってくる。
凄い棘…
今、ちゃんと呪言使えてた。