第1章 enrollment
『今日の悟、何かの王子様みたい』
手の甲にキスなんて海外ドラマでしか見たことないけれど、悟がそうすると自然と様になる。
クスリと笑えば、私の手を掴んだまま悟も笑って口を開く。
「永遠にかぐらの王子ですケド」
『ふふっ』
「なぁ、抱いていい?」
『?…もう抱きしめられてる、けど』
「はぁ、何でもねぇ。…一緒に風呂入る?」
『!な、何言って…!1人ずつ!!』
「はいはい、お先にどーぞ」
そうパッと手を離されて、背中を押される。
あれ…なんだか少し機嫌が悪くなったような?
首を傾げて振り向けば、息を吐き出しながら口角を上げていく彼。
悟のこの優しい笑顔、好き…
「早く入らねぇと、俺、待ちきれなくてかぐらのいるお風呂入りに行っちゃうよ?」
『それはだめ!
…悟、今日疲れてるでしょ?悟こそ先に入って休んでよ、ね?』
そう彼の両手を引っ張って立たせれば、片手で腰を引き寄せられる。
密着する身体が慣れなくて、彼の顔を見上げることができずにいれば、
「かぐらが一緒に風呂入ってくれたら癒されるんだろうなぁ」
『へっ…?』
「癒されてぇなぁ」
思わず彼を見上げれば、わざとらしく片手で額を押さえて息を吐き出していて…
断りにくい…!
わざとらしい態度で忘れてしまいそうになるけれど、今日の彼が本当に激務だったのを私は知ってしまっている。
本当にそんな事で癒されるのかな…