第1章 enrollment
"へぇ、それで?"
黙ったままの悟の目が、そう言っているような気がして、口を薄く開いた。
悟は、今まで小学校や中学校で出会った男の子達とは全然違う何かを持っていた。
こんなにも自分に自信があって、口が悪い人は初めてだった。
それなのに、自然とあまり嫌な気分にはならない…寧ろ、ほとんどの場合、優しさや好意が垣間見えて、どんどんと惹かれてしまっていた。
私が抱えていた不安を、一瞬で消し去ってくれた強い人。
どこで見てもキラキラ光るその白髪に再び指を通せば、急かすように私の心臓の上に頭を預けて見上げてくる彼。
『わ、私を…婚約者にして』
大きくなりすぎた私の鼓動の音にか、それとも熱くなってる私の顔にかは分からないけれど、悟が私の胸の上でクスリと笑う。
悟の息が胸に当たって、恥ずかしい…!
両手で口元を覆えば、左手が彼の手に捕まえられて、薬指の付け根にキスが落とされる。
その一連の動作が綺麗すぎて、見惚れてしまう。
「俺が頼んでんのに、何でかぐらも婚約者にしてって頼んじゃってんの?
ま、いいケド。…指輪、外すなよ」
『そ、そっか…うん、外さないようにする!』
ニヤリと口角をあげた悟が、取り出した指輪を何でも無いように私の指に通していく。私は緊張でどうにかなりそうなのに。
するりと左手の薬指に通されたものを確認すれば、明らかに大きなダイヤモンドが付いており目を見開いてしまう。
た、大切にしなきゃ…!
そんな焦りと同時に、胸がぎゅっと締め付けられるような幸せも感じて、すぐ目の前の彼に微笑む。
「かぐら」
『ん?…!!』
「好き。超好き」
名前を呼ばれて後頭部に手を添えられたと思えば、ゆっくりと重なる唇。
もう何度目か分からないキスでも、胸をぎゅっと締め付けられるような緊張が走った。
今日の悟、凄い大人な感じがする…
キスが終われば、額がコツンと合わせられる。
息を吐くように伝えられた好意に全身が熱くなっていれば、再び左手を捕まえられて、手の甲にキスを落とす彼。
悟が近すぎて、どうにかなりそう…!