第1章 enrollment
『わ!こんなに高いんだね』
「気に入った?」
『うん!こんな夜景見たことないよ』
とあるホテルの一室で、そう隣にいる悟を見上げれば、ふわりと微笑む彼に心がきゅっと締め付けられた。
不敵にニヤリと笑っている姿を見る事が多いからか、その優しい笑顔がなんだか落ち着かない。
私のこと、本当に好いてくれてるんだ…。
ここ数日、何度そう思わされたか。
でもその度に、こんなにカッコ良くて、強くて、優しくて、機転が効いて、おまけにどこかのお坊ちゃんな彼が、どうして私を…?
そう思わずにはいられなかった。
夜景が見えるように照明が落としてある室内でも、キラキラ輝いている白髪から目を逸らせずにいれば、その白髪が少し揺れる。
「こっち見すぎだろ」
『ご、ごめん!悟の髪、綺麗だなって』
「触りてーの?」
そう黙って頷けば、
すぐ近くのソファに腰を下ろして、"どうぞ?"と見上げる悟に片手を掴まれて、手が汗ばんでいく。
サラサラの彼の髪に指を通すと、サングラスを外して目を細めた彼。
悟、疲れてる…よね?
昨日は初めての飲酒で潰れた上に、今日は傑との合同任務で夕方まで高専を離れていて、高専に帰って来てすぐに私を連れ出してくれたのだ。
『悟、こんな素敵な場所、連れてきてくれてありがとう』
「いつでもお安い御用だよ…っと」
『きゃっ!…びっくり、した!』
突然腰を引き寄せられて、悟の膝の上に抱えられてしまう。
密着した身体が恥ずかしくて視線を晒すと、腰に回っている腕とは反対側の彼の手の平に何かのケースが握られているのを見つける。
何かのアクセサリー??
…指輪!?
そう気付いた時には、彼がそのまま片手でケースを開いて、私の額にキスを落とした。
鼓動の音が大きくなっていくのを感じて胸を片手でぎゅっと押さえつける。
本当に指輪だ…
『さ、悟…?』
「好きだよかぐら。俺の婚約者になって」
『!!』
「まあ断られても、逃さねーけど?」
『えぇ!?や…こ、断らない、よ…!』