第1章 enrollment
軽く息切れしながら、そう俺の胸を押し返すかぐらにクスリと笑うと、彼女の赤く染まった頬に手を添える。上目遣いでこちらを覗かれて胸がきゅっと締め付けられた。
可愛すぎなんだよなぁ。
「も、もう、行こ!」
『ハイハイ。
かぐらって、朝メシ食べないとイライラしちゃうタイプ?』
「そ、それは!悟、が…!」
『イライラしてても可愛いケドさ』
そうニヤリと笑ってから扉を開いて廊下に出る。びくりと肩を揺らしていた彼女を見て見ぬふりをして。
2人だけの時の可愛いかぐらを今のうちに堪能しておかないと。
斜め後ろに付いてくる彼女を振り返れば、目が合って首を傾げられる。
『なぁ、棘が帰ってくる前に2人で出かけねぇ?』
「えっと、今日か明日ってこと?」
『そーそー。そこでちゃんと告るからさ』
「え!?」
『授業サボってもいいんだケドさー、かぐらちゃん真面目だからなぁ。
今日の授業終わりに行こーぜ』
ポッケに突っ込んでいた片手を取り出して、彼女の片手に絡ませれば、控えめに握り返される。
かぐらも結構俺のこと、好きなんじゃね?
思わず上がってしまった口角をそのままにして彼女を見下げる。
まあ、今日問いただせばいっか。
昨日は4人だったけど…今日は邪魔させねぇ。
「どこ、行くの…?」
『内緒♡』
そうウインクして言えば、困ったような驚いたような顔で首を傾げるかぐらに軽く息を吐き出して笑う。
変なところには連れてかねーよ?
まあ、夕方までは教えねーけど。
そう考えながら到着した食堂の扉を開こうとすると、かぐらが俺の手首を掴んで制止する。
??
「さ、悟…あの、手、離そう?」
『クスッ…まだ、2人には内緒、だもんな?』
まあ、バレてるだろうけど。
そう心の中で付け加えながらかぐらを覗き込む。
「ち、近いよ…!」
『今更すぎない?まあ、いいケドさぁ』