第1章 enrollment
五条君の部屋に着けば、すでに硝子と夏油君がゲームコントローラーを片手にスルメイカを食べており、高校生とは思えない風格の2人に見上げられる。
「来たね、2人とも」
「大丈夫だったー?禅院家の人達」
「おー、やっぱ禅院家も俺がいるとやりにくいみたいだわ」
『五条君のおかげでなんとか、ははは。
…あ、あれ?硝子と夏油君も知ってる、の?』
え?当たり前じゃん。
まあ、かなり有名ではあるね。
と笑う2人に腕を引かれて座らされ、少し恥ずかしくなる。
御三家って、やっぱり凄いんだな。
「やっぱ嫌だよねー、御三家に入るとかさ」
「俺、御三家の人間なんだけど?」
「ハハッ、そういうものなのかい?女子としては」
『え、っと、御三家っていうか…禅院の人達が怖いんだよね、ちょっと』
そう夏油君に言って笑えば、夏油君の大きな手が頭に乗っかり、お疲れ様と微笑まれる。その優しさにじんわり心が温かくなりながらも、たまに怖い夏油君も思い出して複雑な気持ちになる。
禅院の人達程ではないけれど、ね。
1番初めに禅院家に婚姻を申し込まれた時、禅院の本家に叔父である棘のお父さんと一緒に足を運んだ事がある。もちろん断るために。
当時中学2年生の私は、持ち寄られた結婚の話について行けるはずもなく、とりあえず相手の直哉君に会うことになったのだ。
そこで私は、使用人達にヒソヒソと小さな声で噂され、初めて会う直哉君には上から下までジロリと見回され鼻で笑わて…彼の両親も威圧的で、不快な思いしか記憶に残っていない。
それに、
『禅院家でね、棘くらいの双子の女の子を見かけたことがあるんだけど、双子だからきっと使えないって噂されてて、かなり扱いも酷くて。
この家で子ども産むなんて考えられないって、思って』
「うわー、最悪。まだ五条のがマシだよ」
「硝子?さっきから俺へのあたり強くない?」
五条君の名前があげられ、心の中でどきりとする。
本当に禅院家ではなく、五条家を選んだとはまだ言えそうにない。
少し下を向いて軽く息を吐き出せば、夏油君にゲームのコントローラーを渡されて、反射的に顔をあげる。すると、硝子が私の顔の目の前にピザを運んでいて、
「はい、かぐら〜、口開けて!」
『へ?あ、美味しそう!あーん』