第1章 enrollment
「五条君、は…私が、好きなの?」
恐る恐る俺を見上げるかぐらと目が合い、息が詰まるように胸が締め付けられた。
そうだよ。
心の中でそう彼女の問いに答えて笑った。
口に出しても良かったが、なんとなく、かぐらに意地悪したい気持ちに駆られて、ニヤリと笑うだけに留めた。
そうすれば、目を見開いて一歩俺から離れようとする彼女。抱いていた彼女の肩を無理矢理引き寄せて阻止する。
『ん?』
「…私も多分、五条君が好き」
『…は?』
「好き、って言ったの」
頭の中が真っ白になって数秒固まってしまう。
今、なんて?俺のこと好き?多分?
自分もそうだけど、こんな短期間で?
色んな疑問があるにはあるが、とりあえず嬉しすぎて身体中がじんわりと満たされていく。
頬を赤く染めた彼女は、俺から目を逸らすように背中を向けて両手で顔を覆っているようだった。
何ソレ、反則。
『私、も、って、かぐらチャン、俺に好かれてるって、相当自信があるのかな?』
そう意地悪く言いながら、背後から彼女の両手首を優しく掴んで、ゆっくり顔を覆っていた手を下ろさせる。そのまま、彼女のお腹に両腕を回し顔を覗き込む。
聞こえてくる彼女の早い鼓動に満足感を抱いて、口を開く。
『その通りだよ、かぐらすげえ好き』
「!!ま、待って…そんな、くっつかないで」
『ククッ…可愛いから離したくねーなー』
そう言いながら彼女を回転させて、腰を折って顔を覗き込む。
目が合うとびくりと身体を揺らして目を逸らされてしまう。
首筋にさっき俺がつけた赤い痕が見えて、思わず口角が上がりかぐらをさらに怖がらせてしまう。
まあ大丈夫か、俺のこと好きなんだし。
『かぐら?』
「…ゲーム、しにいこ?」
『フッ、良いぜ。
これから婚約者?彼女?どっちがいい?』
そう先に歩き始めながら、振り返らずに言えば、遅れて横に走ってくる彼女。胸を手で押さえながら目を泳がせており、その困り果てている姿が、棘といる時の彼女とは全くの別人で、全て独り占めしたくなる。
「恥ずかしいから、どっちも待って…」
『しょうがねぇな』
「あ、ありがとう」
『黙っててやるから、またキスしてよ』