第1章 enrollment
眼は真剣に、けれど口角は上げながら、私を壁と五条君の間に閉じ込めるように、片腕を私の頭の上の壁につく彼。
もう片方の手の人差し指は私の顎を持ち上げて、目をそらすことは許されなくなってしまう。
五条君は本気で私と結婚しようと思っている、ってこと…?
「おっせーな、返事は?」
『う、うん!』
思わずしてしまった返事が何の返事かも分からないほどに真っ白になっていく脳内。ニヤリと不敵に微笑む彼に首を傾げていれば、彼の顔が近付いてきて、ぎゅっと目を閉じてしまう。
!!
さっきの直哉君と同じ…!?
私の耳の淵にぴったりくっついた五条君の口がゆっくり動き、
「消毒するから動くなよ」
『消毒…?ひっ!ぁ、んっ』
五条君の舌が私の耳を丸ごと食べてしまうように、ねっとり舐め回していき、くちゅりと水音が耳の奥まで届くような感覚に身体がびくりと揺れる。
声、出ちゃう…!
ぎゅっと目の前の彼の制服を掴み、全身に走り回る刺激に耐えていれば、五条君が私と目を合わせ、口を開く。
「くちゅ…びくびくしちゃって、俺に舐められるの、そんなにイイ?」
『そんな、こと…!んっ…』
そうニヤリと意地悪に言われて思わず否定すると、五条君の顔がスッと私の首に埋まり、緊張と少しの恐怖の後、思い切り首筋に吸いつかれる。
なに、してるの…?
『五条、君…?』
綺麗で真っ白なサラサラの髪が顔に当たり、目を少し閉じれば、首筋を舐め上げられて、また身体が大きく揺れた。
「かぐらは俺のだから、いいな?」
いや…
そう言いかけそうになったところで、五条君が冷たい目をしているのに気付き、恐怖心から黙って首を縦に動かす。
その瞬間、パッと五条君の表情が明るくなったと思えば、肩を組まれて、再び五条君の部屋に向かって歩き出すことになる。
「よーし!今晩は硝子と傑とゲームやり込むぞー」
『へ?ゲーム?』
「来るだろ?」
『い、行きます』
な、何がなんだか、もう…
五条君のこと、本当に分かる気がしないよ。