第1章 enrollment
使用した呪具を背中のケースにしまいながら、倒れている子ども達に駆け寄るかぐら。
綺麗で、強くて、優しくて、おまけに反転術式を持っている。
禅院がかぐらを求めてる理由がよく分かった。
倒れている子どもは12人。
まだ本調子でない彼女が、こいつらを全員治すとなると、また倒れかねないと思い、彼女の肩を軽く掴んだ。
『本調子じゃねーだろ、やめとけ。病院に連れて行く』
「大丈夫だよ」
『"目"で分かるって言ってんだろ』
「…バレちゃったか、あはは」
そう苦笑いしてからゆっくり目を閉じる彼女は、自分の無力さを痛感しているんだと直感し、片手を彼女の頭にのせた。
『すぐ近くに病院あるから問題ないだろ。棘戻ってくるまであんま呪力使うな』
「五条君…本当、優しいね。なんか私、ちょっと誤解してたかも」
そう言って、子ども達を抱っこして車に運ぼうとするかぐら。
かぐらにだけだけどな。
まあでも、そういう事にしておくか。
俺も3人の子どもを抱えて、補助監督の車へ歩き始める。
だいぶ弱ってんな、死ななきゃいーけど。
「たーいま」
「おかえり〜、五条とかぐら」
「かぐら、体調は大丈夫かい?」
『ありがとう、もう大丈夫!
硝子、治してくれて本当にありがとう』
「いいよー。…それよりかぐら、五条に何もされてない?」
硝子の言葉にびくりを身体が揺れて、すぐ横にいた五条君にぶつかってしまう。サングラス越しに目が合った五条君は、口角が上がっていて、思わず目を見開いてしまう。
任務を終えて教室に入れば、授業プリントに突っ伏していた2人がいて、なんだか安心した、のだけれど…
「は?五条?まじ?」
「何かされたのかい?」
『な、なな何も…されてない』
「かぐらチャン?誤解されるような反応しないでくれる?」
『ご、ごめん』
そう後ろから五条君に腕を掴まれて、にっこり微笑まれてしまう。
五条君からはされてないけど…私からキスしちゃったんだよね。
そう昨日の夜のことを思い出して、顔が熱くなる。
「だから、かぐらチャン?」
『ごめん、無理…』