第1章 enrollment
今も弱いままのかぐらの呪力。
次第に聞こえてくる彼女の寝息に安心しながらも、明日からのこと考える。
明日はとりあえずかぐらの任務だろ。
3日後、棘が戻るまでにかぐらの呪力を回復させる。
これからは10日以内に1日、出来れば2日の休息はマスト。
五条家の人間をその頻度で動かすには、やっぱりかぐらを…
『あーもう、考えんのムリ。寝よ』
『いかにも出そうなビルだな』
「10人くらい、人質いるみたいなの」
『それ、かぐら1人で大丈夫なワケ?』
「人質案件は狗巻家の得意分野だからね、あはは」
『フーン』
かぐらが指名された任務。
すでに帳は降ろしており、2人で廃屋の前に立って目を合わせる。
かぐらに危害が加わりそうになったら俺が変わる。
そう夜蛾センセーに言って無理矢理俺も付いてきた。
かぐらが戦ってるところは見たこと無いけど、結構ヤバそうな任務じゃない?
廃屋の入口に向かって歩き始めた彼女に、2歩遅れて着いていく。
扉を開きながらネックウォーマーを下げる彼女。
それを見て無下限呪術を発動させる。
棘の呪言はすぐに解除出来たが、かぐらのは分からないからな。
「五条君、耳、ちゃんとどうにかしててね」
『とっくにやってるっての』
そう腰を軽く折って、かぐらのネックウォーマーを外した顔を覗く。
朝、俺の部屋からここに直接来たため、いつも下ろしている髪はお団子にしてまとめあげられている。新鮮で可愛い。
俺と目が合うと少し笑って、姿を隠している呪霊の方へ向き直る。
かろうじて生きてはいるが、呪いにあてられている子ども達が何人も倒れているのが見える。
その全員に突きつけられているのは、数体の呪霊から伸びる呪力の塊。
なるほど。これじゃ、普通は祓えない。
そう思った刹那。
「【動くな】」
廃屋中の空気が、呪霊達がピタリと止まり、かぐらの背中から鎖の音が響く。
特級呪具、游雲。
本家で見たことはあったが、自分には必要のないものだと手に取る事はなかった。
素早くそれを構えた彼女は、一気に呪霊との距離を縮め一瞬で数体の呪霊を祓ってしまったのだ。
え、強くね?