第1章 enrollment
『!!…もう大丈夫ですから呪具を下げて下さい。』
部屋の扉を開き、状況を飲み込むと、中央に座らされている棘を強く抱きしめて周りの大人を睨んだ。
泣いて腫れてしまったのであろう棘の瞼が目に入り、胸が締め付けられる。
大の大人が3人も。
3歳の棘に呪具を向けて、取り囲むように"見張って"いたのだ。
『聞こえませんでした?』
ゆっくり下げられる呪具を横目で確認し、顎で部屋の外に出るように指示する。
『棘、かぐらだよ。覚えてるかな?
もう大丈夫。怖いことはないよ?顔を上げて?
私といる時は何を喋っても良いからね』
そう私が微笑むと、怯えた表情で口をパクパクさせる棘。
『大丈夫。ほら、私の頭を見て?
特別な力で守ってるから、棘が何か話しても大丈夫なんだよ?』
「ほ、ほんと?
さ、さっき、ね、僕が…【やめて】って言ったら、【おかしく】、なっちゃって、う、ぇ…うぅ…」
『大丈夫。私はおかしくならないから、ね?』
言葉のところどころ混ざっている呪力から、棘の術式が本当に3歳で発現してしまったのだと悟る。
念の為、この部屋やこの家も呪力で覆いながら、棘が落ち着くように背中をさすりながら抱きしめ、口を開いた。
『この力は特別なんだよ?私達家族しか持っていないの』
「とくべつ?」
『そう!この力で色んな人を助けることができるの。
…ねぇ、棘も頑張ってみない?』
そう少し棘から離れて目を合わせると、驚いた表情を浮かべながらも、大きく頷いてくれたんだ。