第1章 enrollment
シャワーを浴び終えて、部屋着を着ている途中で手を止める。
普段、太腿に身につけている呪具は、敵に悟られないようにかなり脚の付け根に近い位置にベルトを巻いているのだけれど…
五条君が外してくれた、のかな。
ってことは、下着見られてる!?
顔が熱くなっていくのを感じて、誰もいない脱衣所で思わず両手で顔を覆った。
背中に隠して持ち歩いている呪具は、肌着のキャミソールの上からそのケースを斜めがけにしているのだけれど、私、そのケースも身につけて無かった…
さ、さすがに、制服を脱がしてくれたのは硝子、だよね…?
きっとそうに決まっていると自身に言い聞かせて、急いで部屋着を着て深く息を吐き出した。
早く、戻らないと…!
五条君のお部屋に戻れば、彼もラフな格好に着替えており、何でも似合ってしまう彼を数秒見つめてしまう。
「ナニ?俺に惚れた?」
『ほ、惚れたんじゃ、なくて…』
「じゃなくて?」
『五条君は、何着ても、カッコいいなって、思っただけ…』
「そりゃどーも」
そう口角をあげながら、扉の前に立つ私の背中を押してベッドに座らせてくれる五条君。
どう、しよう…
恥ずかしすぎて、何も言えないよ。
ゆっくり顔を上げて彼を見れば、優しく微笑んでいて、胸がぎゅっと締め付けられた。
「体調、大丈夫?」
『大丈夫、だよ。ありがとう』
そう首を傾げながら私のすぐ隣に座る五条君。
ちょっと、今はダメ…かも。
そう思いながら、彼とは反対方向を向いて胸をおさえていれば、
『!?…ご、五条、君?』
「無理すんなよ。棘のことはなんとかしてやるから」
五条君とは反対方向を向く私を、五条君は後ろからふわりと包み込んで、そう優しい言葉でさらに私を動けなくしてしまう。
本当はずっと不安だった。
棘のことを自分だけでどうにかしなければいけないのだと思い込んでしまっていたからか、彼の言葉で、全身が溶けていくように解放された気がしたのだ。
私の顔のすぐ横には五条君の顔があって、ゆっくりそちらを向いて彼の頬に手を添える。
さっき、お礼に私のファーストキスが欲しいって言ってたよね。
そう心の中で五条君に問いかけながら、彼の唇に私のそれを重ねたんだ。