第1章 enrollment
「クッ…分かりやすく言ってやろうか?」
『へ?』
「かぐらのファーストキス、お礼にくれよ」
『!!?な、なんで…?』
そういうのって、恋人とか、好きな人にするものじゃないの?!
目を細めて余裕そうに、私を壁際に追い詰めて笑う五条君に目を見開く。
こんな時なのに、彼の髪や目を綺麗だと思ってしまう私はどうかしてしまっているのかもしれない。
『きゃっ!ち、近い、よ…』
逃げ場の無くなった私の脇に五条君の手が差し込まれて、持ち上げられる。
五条君の胡座の上に向かい合うように座らされて、彼との距離はほぼゼロになってしまった。
めくれたスカートの裾が気になりながらも、片手で口元を押さえて目を逸らす。
五条君、本当に何考えてるの…!?
「胸もダメでキスもダメなわけ?」
『お礼はしたいけど、それは…!
誰かが怪我してるならまだしも…』
「じゃー、俺の肩凝りと目の疲れを癒してよ」
『それなら…』
フッと鼻で笑った五条君は着ていたワイシャツのボタンを外し、首周りをはだけさせると、首を私が治しやすいように傾けてくれる。
なんだか、イケナイ事、しちゃってるみたい…
五条君の色気にたじろぎながらも、意を決して口内で呪力を反転させながら、彼の両肩に手を添える。
痛い程に大きくなる心臓の音に気付かないフリをして、ゆっくり彼の首の付け根にキスを落とし、肩の方まで軽く舐める。
五条君の顔を一度見れば、ほんのり赤く染まっていて、私も顔が熱くなる。
こっちの肩も早く終わらせなきゃ。
そう私が深く息を吸い込むと、五条君の後ろにあった彼の片手が私の腰を掴み、もう片方の手が私の二の腕掴んだ。
『ひゃっ…』
「かぐら、マジでやばいかも。早く終わらせちゃって」
『う、うん?』
少し熱い五条君の腕に背中がゾクリと震えて、言われた通りにもう片方の肩を舐め終える。
五条君に触れている場所が熱い。
次は、目の疲れ…?
『五条君、その、やりにくいから…目、閉じて?』
「了解」
五条君の睫毛、長くて真っ白で本当綺麗…
目の疲れなんて治した事ないけど大丈夫かな。
そう少し心配しながらも腰を上げて、五条君の瞼や目尻にキスを落としていく。
瞼にキスなんて、恋人みたいでちょっと恥ずかしい、かも。