第1章 enrollment
口角が上がったままの夏油君にそう言われて、目を見開く。
時折、繋いでいる夏油君の親指が私の手を撫でる度、びくりと身体が揺れて、身体中が熱くなる。
何、これ…恥ずかしすぎるよ。
硝子と目が合い、助けてと目で訴えると、
「五条も夏油もどっちもどっちだよー、やめときなよかぐら」
『な、何の話…!?』
「はーい!ハッピーセット全種盛りでーす!」
!!
目の前に置かれるたくさんのハンバーガーとハッピーセットのおもちゃ。
心なしか、私と夏油君のテーブルのだけ雑に置かれたような…
戻ってきた五条君を見上げれば、彼は私と夏油君の手を乱暴に解いて口を開いた。
「…傑、やめろ」
「離したよ、ククッ…相当だな」
「あぁ?」
「いや、なんでもないよ」
静かにそうやり取りする2人に首を傾げながらも、夏油君の手が離れたことにホッとする。
夏油君の目の前で手が離れたことを喜ぶ訳にもいかず、五条君に心の中でお礼を言いながら微笑めば、頭にポンッと彼の手がのり、微笑み返される。
優しい…
『あの、五条君!ありがとう、こんなにたくさん。
ほら、棘もありがとうってして?』
「ごじょー!ありがとう!凄いたくさん!!」
「どーいたしまして。俺の奢りだから全部食えよ?」
「凄い大量じゃん」
『ねー、食べ切れるかな?』
はしゃぐ棘と一緒に遊んでくれる硝子を見ながら、本家で泣きながら震えていた棘を思い出して、別人みたいに笑うようになったなぁとしみじみする。
急遽明日、私に呪霊討伐の任務が入ってしまったため、今日この後、棘は本家に一時帰宅して明日までご両親と過ごすこととなっている。
この様子なら、言葉を話さないようにしていれば大丈夫そうかな。
「棘と離れるのは何日ぶりになるんだ?」
『えーっと、40日ぶりくらい、かな…あっという間だなぁ』
「でも明日の夜からまた一緒なんだろ?」
『うん!棘が居なくなると、私の方が寂しくなりそう』
「じゃあ今晩は女子会しよ?男子禁制だから」
そう笑いながら私が言えば、硝子が私を棘ごと抱きしめてニヤリと笑う。
『女子会する!』
「決まり!」
「はははっ、男はダメらしい。棘、私のところにおいで」
「うん!げとー、抱っこして!」