第1章 enrollment
「ご注文はお決まりでしょうか」
「とりあえずハッピーセットの全種類とー…あと、コレも」
『へ?全部?』
「ん?あぁ、かぐらは席行ってていーよ」
私の驚き様に、五条君は口角を上げながら私の背中を押した。
店員さんも少し驚いた様子で五条君の注文を聞いており、私の反応は間違ってないと思いながらも、言われた通りに先に戻ってきてしまう。
棘と2人の予定だったが、夏油君や硝子、五条君も一緒に来てくれることになり、戻った席は賑やかで、
「あっれー、五条は?」
『戻ってていいよって言われちゃって、大丈夫、かな?』
「かぐらちゃんは、ここに【座るの】!」
『いいの?お隣、五条君じゃなくて』
「朝、かぐらちゃん、げとーの隣嫌そうだったもん」
!!
思わずむせ返りそうになりながらも、硝子と棘を挟むように棘の左隣に座る。
棘、何を言い出すかと思えば…!
硝子はツボにハマったのかケラケラと笑っており、夏油君は笑顔を崩さないまま口を開く。
「へぇ?どんな風に嫌そうだったのかな?」
「えっとねー、げとーがかぐらちゃんのことジーッて見てて、かぐらちゃんが何もお話しなくなったの」
『い、嫌では、なかったよ!?
あの、ただ、凄い見られてたから恥ずかしくて…食べにくかっただけで』
「あはははっ、棘サイコー!」
夏油君にそう説明するが、明らかにわざとらしく残念そうな顔をして棘の方を向いている。
何を言うつもりなの…!?
「どうしたら仲直りできるか教えてくれないか、棘」
「んーとね…握手!【仲直り】の握手!」
「なるほどね。これでいいかな?」
『え、ぁ…』
!!
机の上に置いていた左手が夏油君の右手に絡めとられ、机の上に再び置かれる。
これって、握手…?
そう首を傾げていれば、恋人繋ぎのように指まで絡め取られ身体が揺れる。
夏油君の目を見上げれば、ん?と微笑まれるだけ。
腕を少しひいても、手をぎゅっと握り返されて離れることが出来ない。
『棘、握手ってまだ終わらない?』
「んー、あ、出来た!」
「おー、折紙うまいじゃん棘」
『き、聞いてない?!』
「かぐら、ただの握手でどうかしたかい?」