第5章 毒蜘蛛おんりー目線
群れるのが嫌いな訳じゃない。気づいたら一人になってただけ。
俺たち毒蜘蛛たちは人間たちに害だからという理由でスポナーを壊された。それだけじゃなく、保護という名目でMOB販売所に商品として並んだ。
そして人間たちの勝手で、俺はおんりーと名づけられた。だから群れが嫌いじゃないんだってば。俺はこのオリの中から出たいだけなんだけど。
と考えて俺ははっとした。俺はここから脱出してどこに行ったらいいんだろう。スポナーも壊されて帰るところもないのに。
そうこうと考えている内に、お人好しそうな人間が僕を買った。その人間が、今の飼い主だ。
飼い主はずっと、慎重な行動を見せていた。俺は毒蜘蛛だから高いところから落ちたって平気なのに、やたら飼育カゴをゆっくりと置く。それから飯を出す時も分厚い何かを身につけてから俺のそばに手を入れてくる。噛みつく必要も思いつかないから黙って飼い主の様子を見ていたら、ある日大きな手が落ちてきて。
「あ、手袋が落ちちゃった」
テブクロ。そうか、これが手袋なのかとすぐに理解して俺は開けっ放しの蓋から飼育カゴを出た。糸を吐き出して手袋にくっつけてくるくる巻けば背負える。仕方ないから飼い主に届けてやると、かなり驚いた顔してたっけ。でもなぜかその行動きっかけで飼い主は俺の飼育カゴに鍵を掛けなくなり、いつでも外に出られるようになった。