第1章 ロッカーパニック
「ねぇMEN」
「な、なんすか?」
「狭くない? 僕最近太ったからさ〜」
「それを言うなら自分の方が迷惑かけてるって言うか……ドズルさん?!」
何を思ったのか、ドズルさんが顔を俺の肩に乗せてきたのだ。
「ごめんごめん……ちょっと疲れてきちゃって」
「……え?」
ここで俺は、ドズルさんの異変にようやく気がついた。
確かに外は猛暑中の猛暑だ。だが、この会社はエアコンがよく効いている。快適な気温だというのに、ドズルさんがさっさと服を脱ぎ始めるということがあるだろうか。それに、服を脱いでロッカーに入ってしまう判断力や行動力の低下があるんだとしたら、それは一つしかないと思った。
「ドズルさん、もしかして体調が悪いです?」
俺がそう問いただせば、ドズルさんは一瞬間を置いてぽつんと白状した。
「実は……本当は熱が出ててさ」
「はぁ?!」
なんで来たんすかと聞けば、昨日よりは下がったからとか今は微熱だとか言い始め、自分は平気だと話すのだ。そんな訳ないでしょうが。一人で立ってるのもつらそうなのに。
「さっさと出ますよ、ここから」
俺はそう言いロッカーを蹴破ろうとしたが、ドズルさんの足が絡みついていてどうも動けない。ドズルさんからの息が荒くなっていく。体重がどんどん掛けられて、俺すらも体が熱くなってきたように錯覚した。
「いやぁ、ドズさんどこ行ったんだろな〜」
その時、聞き慣れた声が部屋に入って来た。見ると部屋にはぼんさんが戻ってきていたのだ。俺は必死にロッカーを叩いた。
「ぼんさん、ロッカー開けて……!」
急に音が鳴ったことにぼんさんは驚いたが、間もなくロッカーを開けてくれて俺たちはなんとか助かった。
「なんでそんなところにいるの?」
ぼんさんは早速聞いてきたが、とにかく今は救急車を、と言って連絡を取ってくれた。