第1章 ロッカーパニック
「じゃあなんで俺もロッカーに入れたんすか!!」
と叫べば、ロッカーからようやく出たと思ったのに、また閉じ込められると思って、とドズルさんがボソボソと話続けた。
「だって、ずっと一人で心細かったんだよ……声も聞こえないみたいだし」
なんだ、このロッカーは。まるで金庫みたいなロッカーだと考えていると、ドズルさんが「貴重品も入れる用のロッカーだからね」とまるで心の中を見透かしているかのように言ったからドキリとした。この人はどこまで、人の心が読めるのだろう。
「まぁ、いつかはぼんさんも帰ってくるだろうし、開けてくれますよ、きっと」
と俺は言い、ロッカーのすき間からもう一度部屋を覗き込む。静まり返った空間に、扉の向こうからすらも人の気配を感じない。
「そうだといいんだけど……」
ドズルさんの不安そうな声をどうにかしたいと思って、俺は会話をすることにした。
「そもそも、なんでぼんさんがドズルさんの着替えを持ってどこかに行ったんです?」
「多分だけど、スタッフが間違えて僕の服をぼんさんのところに置きに来たんだなって勘違いしたんだと思うよ」
「あ〜、だから服をドズルさんの部屋に持って行ったと」
「多分ね」
会話が終わってしまった。何か話さなくてはと思うが、それより俺の体にぴったりドズルさんの体がくっついていることに目が行ってしまう。
心臓の音が早いことに気づかれてしまうんだろうか。俺は気にしないようにしてひたすら部屋に誰か来ないか目を逸らし続けた。