第5章 あの人と出会ってしまった
「手なら繋いでもいい…のよ…っ」
こんな時に限って、素直になりきれない。
しゃがみ込んだ私とさらに背中を曲げて私に視線を合わせる五条くん。
それなのに…なんなのよこの上から目線、私ってそんなに高飛車だったのね。
「言ったな?寧々の方から手繋ぎたい♡って」
「そんな甘えた言い方ではなかったと思うわ」
ツンケンしてしまう自分が憎らしい…それと同時に
「……私は綺麗な手ではないのだけれど」
兄に触れたばかりの、兄に塗れて躾けられた手で五条くんに触れてしまっても…本当に…いいの…?
「寧々の過去を全部は塗り潰せないけどな、薄めるくらいは出来るんじゃねぇかな」
「たいそうな自信ね」
過去に何かがあったことは察しているのね。
それでも無理に聞き出さない五条くんの隣が心地良い。
「それじゃ、お手をどうぞお姫様」
「お姫様じゃないわ」
「…少しはカッコつけさせろよ。仕方ねえ、やり直すわ」
五条くんは一度差し出した手で頭をポリポリと掻いた。
「泣き止んだみたいだし、そろそろ立ちあがろうぜ?寧々」