第5章 あの人と出会ってしまった
赤子のようにわんわんと泣き放つ私を、温かい瞳でゆっくりと溶かしていく。
言葉こそ、まだ何もないけれど。
五条くんが隣にいてくれるだけで、ほぐれていく。
完全に蝕まれた心を癒すことはなかったけれど。
「寧々、今は好きなだけ泣いてろよ。あとで話したくなったら、何でも聞かせて」
低くて甘くて落ち着いた声が私を包んだ。
まるで求めていた言葉を与えられたように、少しずつ少しずつ涙が止まっていく。
「気に食わないやつは、俺がぶっ倒しても良かったんだけどな。その役目は寧々がやりたそうだったから」
五条くんはどこまで見透かしているの…?
どこまで話してもいいの?
話を聞いてくれるの?
誰にも言えない、自分が完全に被害者だと認めたことになるから。
みみっちいプライドが音を立てて崩れていく。
喉は自然と枯れて、涙声は掠れていった。
「ティッシュ、使うか?」
「あ、あ゙りがどぅ…っ」
「別に鼻水出てても可愛いんだけどな?寧々はそれじゃ嫌だろ」
五条くんがポケットティッシュを差し出した…のに、