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〖呪術廻戦〗大人しく抱かれてろ【R18】

第5章 あの人と出会ってしまった




違うと声に出して否定したいのに、喉が不自然に枯れて息だけが溢れた。


「寧々、帰る前に約束しよっか。こっちにおいで」


薄ら笑いをする兄に離れたいと望むほど、すくんでいた足が、震えていた足が一歩二歩と近づいていく。


「約束。子供の頃もよくした指切りだよ。さぁ、手を出して」


何度も殴られ、叩かれ、指をさされた、髪の毛を引っ張るのも体中を引っ掻くのも…全部、その手だった。


忌み嫌う手に触れるはずもない…のに、吸い寄せられるように小指が触れた。


「寧々…っ!?」


「指切りげんまん、僕たちはずっと仲良しだ。いいね?指切った」


何一つ拒絶を示せない体が飽和して、涙だけが辛うじて流れた。


「泣かないでよ寧々、またすぐ会いにくるよ。それまでは…許しててあげる。またね」


兄が遠く、小さくなっていく。


さっきまで、私に恐怖心を煽ってトラウマを呼び起こしていた兄が。


姿が見えなくなって、やっと咽び泣く声が出た。


またしゃがみ込んで、みっともなく泣き縋る私に、五条くんはなんて優しい目を向けるのだろう。

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