第2章 馬鹿と告白と初デート
五条くんは私の目線に合わせて、大きな体を半分に屈めた。
「やめて…っ!気持ち悪い…っ」
ぐっと近づいてきた顔を机に置いてあった鞄で押し退ける。
「そういう粘膜的接触はしたくない。なんなら触らないで」
もう誰も…私には触れないで。
消えない傷ばかりが増えて、癒える事なんて無いのだから。
「愛想のない彼女だな、でも寧々だから可愛い」
「頭、大丈夫?」
一応は恋人にキスを拒絶されたというのに、お気楽なものね。
「俺の心配してくれてるの?寧々、優しー。そういうとこも好きだわ」
「頭の軽い馬鹿男は嫌いよ」
そうね、形だけの恋人だから愛を囁く必要はないでしょう。
心にもないことをペラペラと軽々しく言うなんてできないもの。
「つーわけで、放課後デートと行きますか…!」
「はぁ?……っ…!」
五条くんは一瞬だけ私の手を取ろうとした。
でもぴたっと動きを止め、さっさとひとりで教室から出て行く。