第2章 馬鹿と告白と初デート
「私は五条くんを好きにならない」
これは政略的で打算な考えだ。
五条家の人間と便宜上恋仲となれば、それは私の復讐に使えるのではないだろうか。
損をすることはないどころか、追い風にだってなる…。
「俺を好きにならない…ね。いいよ、乗った。今日から寧々は俺の彼女だ」
ヘラヘラした外見と違って、少しは頭が働くのだろう。
私の計算全てを読み取ったような顔で、五条くんは頷いた。
「その代わり、俺からも条件をひとつ」
「なに?」
サングラスをしていて表情こそ分かりづらいけど、口元が嫌にニヤけている。
「寧々は俺に惚れること、いいな?」
「はぁ?」
私が提示した条件と真逆の発想に面食らう。
「寧々が俺に…俺の背後に何を見てるのか知らないけど、五条悟という人間を好きになってもらう」
「意味分かんないんだけど」
私が見込んだのは五条家というバックであって、五条くん本人ではない。
「とりあえず、付き合うってことは両思いってことだ。恋人らしいことをしようぜ」