第2章 馬鹿と告白と初デート
「触らないで」それを実行してくれたのは、五条くんなりの配慮なんだと思う。
「山ん中だからなーんもない。街にでも行こうか」
五条くんは私が後ろを着いてくる前提でそそくさと歩いていく。
遅れを取らないように着いて行ってしまう私は…なぜ?
断って帰ればいいものを「触らないで」くれた五条くんに少しだけ恩を感じてしまったから…?
「変な…気持ち…」
「ん?何か言った?」
「何も言ってない」
阿呆そうな面で振り向いた長身の男は、私が追いつくまで立ち止まった。
人間2人分の距離をあけながら並んで歩いていると、まるで青春ごっこをしてるみたい。
「やっぱり変…」
青春なんて、私には必要のないことなのに。
ごっこ遊びによく似たこの並びに、少しだけ感情が揺さぶられてる…。
「寧々」
「なに?」
「初デートなんだからさ、思いっきり楽しめよ」
「何を楽しめばいいの」
実際、2人で道を歩いてるだけなのに。
「俺と寧々、2人でいるだけで思い出になるだろ?思い出が増えるってことは、それだけ楽しいってことだよ」