第5章 あの人と出会ってしまった
「寧々は僕の相手が好きだよね?」
「ーーっ!」
「次は兄妹仲良く、水入らずで話そう」
お兄様との「次」は楽しくもなんともない。
ただ私が、強くなった私が、真っ向から歯向かう「次」だけが欲しい。
呪力とか術式とか、体術とか知識とか、どんなに持ち合わせたところで目線一つ合わせられやしない。
何が《復讐》だ……っ。
私は、こんなにも弱かった。
水無月家の誰よりも強いなんて妄想を振り翳しながら、地面に屈することしか出来なかった。
「あ、そうだ。五条悟、よく聞いて。キミの好きな寧々は、キミのことなんて好きにならないよ。触らないで欲しいんじゃないかなぁ?」
「あ?てめぇに何が分かる?」
「僕と寧々にしか分からないよ。もっとも理由なんて無いけどね。そうだろう?寧々」
お兄様は無言の答えを察して、気味悪く笑った。
心からのほくそ笑んだ笑顔。
嘘でも偽りでもない、愉快で愉快でたまらないって顔。
「僕たちが一蓮托生だったってだけだよ。寧々は僕以外は受け付けないんだ。ほーんと、お兄ちゃんっ子だよねぇ」