第5章 あの人と出会ってしまった
「これか?店内にある全部のペアグッズ買ってきた」
「もちろん1人で使うのよね?」
「そんな寂しいこと誰がするかよ。寧々とお揃いにすんだよ」
五条くんはさも当然と言ってのける。
「嫌」
「今じゃなくても、いつかお揃いにしたいって言い出した時の為にな。イルカショーだって最初は前で観るの嫌がってたのに、次も最前列で観たいって気が変わったんだろ?寧々はそういうところあるからな」
五条くんは私のことを理解したような口ぶりで、大層ご満悦そうにとても楽しげに笑った。
「寧々、今日はありがとな。最っ高に楽しかったぜ!笑った顔も見れたしな」
「笑ってない。頭、大丈夫?」
何度も顔を背けてしまうのは、口元がニヤけていることを知られたくないから。
楽しかったと笑う五条くんの笑顔が、私まで笑顔にするところだった。
こんな感染が起きるなんて、変。
「頭か?寧々のことでいっぱいだな」
「容量が足りてないんじゃない?」
私の皮肉った言葉に五条くんは……