第5章 あの人と出会ってしまった
ヘコアユやチンアナゴのグッズはあっても、オジサンのグッズはないのね。
「寧々、これとかどうよ?」
「趣味が悪いわね」
五条くんが手に取ったのは、2頭のイルカが頭を突き合わせてハートを作っているキーホルダー。
それぞれ1頭ずつに分けて持つことができて、パッケージにはカップルや友達にオススメと書いてある。
「こういうのは両思いの人が使うのよ。私達には…」
ハートが似合うような愛し合ったカップルでも、友達でもないから。
「よし、これならどうだ?」
提案を却下された五条くんが次に手に取ったのは、同じイルカのチャームが付いたボールペン。
「シャープペンもある」
小さなイルカはハートマークを作るでもなく、ほのかに揺れるだけ。
「これなら…まぁ…」
お揃いを買うことに抵抗はなかった。
五条くんが欲しいなら、楽しいなら、それでいいのではないかと思った。
だって
「私は使わないけど」
「なんでだよ!?」
「お揃いなんて恥ずかしいだけじゃない」
「俺も寧々とお揃いじゃなきゃ要らねーんだよ!寧々とペアだから欲しいんだよ!」