第5章 あの人と出会ってしまった
楽しい時間ほど、あっという間に過ぎてしまう。
「イルカって可愛くて賢いのね。もっと観ていたかったわ…」
「また今度来ようぜ。次は寧々の希望通り、後ろの席にしような」
「…もう一度、一番前で観てみたい。水飛沫を浴びながらのショーはとても楽しかったから」
「ククッ、すっかりお気に召したな。あんなにキラキラした目で見つめてたんだから、当たり前か」
五条くんは、また私の方を見ていたらしい。
私はイルカショーしか観ていなかったのに、五条くんはよそ見をしていたの?
「怒るなよ?デートなんだから、相手の様子も気になるだろ」
「デート…」
五条くんが私を見ているほどではない…にしても、五条くんがどんな反応をしているのかは、少し気になってはいた。
退屈させていないだろうか、どこか遠くに離れていっていないだろうか、頭の片隅には考えていた。
「寧々、俺の考えてきたプランはまだ終わりじゃないぜ?」
「イルカショーを観るまでしか聞いていないのだけれど」
「覚えてないのか?前に言っただろ」