第5章 あの人と出会ってしまった
「ご来場の皆様ー!お待たせいたしましたー!イルカショーの開演です!!」
飼育員さんの明るい声と同時に軽快な音楽が流れる。
「まずは本日頑張ってくれるイルカ達の紹介でーす!」
3匹のイルカがそれぞれ名前を呼ばれるたびに、ちょっとした芸を披露する。
ヒレをパチパチと動かして拍手をしたり、その場でオビレで立ち上がってみせたり、ぐるっと回ったり…。
可愛いらしいイルカがなんとも愛らしい動きをしているのは、人の心を掴むには十分だった。
「それでは、この吊り上げたバーの上を飛び越えてもらいましょう!」
「あんなに高いのに届くものなの?」
「まぁ、観てろって」
イルカの運動能力は極めて優れているとは聞くけれど、空中に固定されたバーまではかなりの高さがある。
それでも指示を出されたイルカはぐんぐんと泳ぎ出し、余裕を持ってバーを飛び越える大ジャンプをした。
凄いと思った瞬間に、バシャンッと跳ね上がった水飛沫が全身にかかる。
「カッパ着てても濡れたじゃない!」
「それが醍醐味なんだよ」
隣の五条くんを睨むと、彼はケラケラと笑っていた。