第5章 あの人と出会ってしまった
「すみませーん!カッパ2つくださーい!」
「あ、ちょっと…!」
「はーい、ありがとうございますー!200円ちょうだいしますねー!」
五条くんは近くにいた係員さんからビニールのカッパを買うと
「これ着てれば大丈夫だから。それとも俺に守られたい?」
絶対に避けたい選択肢をひけらかして、おもむろに羽織り始める。
「寧々はイルカショー観るの初めてだろ?イルカショーってのはな、一回最前列で観て、次からは濡れたくないから後ろに座るようになるのがセオリーなんだ」
「違うと思うけど」
「次に来た時は後ろの方に座るから、今日だけは一番前で楽しもうぜ」
次に来た時…五条くんが自然に発した言葉が、私には嬉しかった。
また次も連れてってくれるのね。
す、水族館に。
新しい展示が増えているかもしれないし、カフェのメニューも変わっているかもしれない…から、
だからまた訪れたい…だけ、それだけ。
隣に五条くんがいたら、それはそれで、た、楽しいでしょうけど。