第5章 あの人と出会ってしまった
いじける五条くんは、さっきまでははしゃいでいたり、落ち込んだり、嬉しそうだったり、楽しそうだったり…表情がころころ変わって面白い。
「ふふっ」
「!?寧々!?」
「……?……!」
「笑って「笑ってない」
思わず押さえた口元のキュッと上がった口角を下げる。
細めかけた目をカッと見開く。
そして顔を体ごと背けて立ち上がる。
「イルカショーを観るんでしょ。早く行かないと席が埋まってしまうかもしれないわ」
五条くんといるとペースが乱れる。
「ククッ、寧々は本当に可愛いな。強がらなくてもいいんだぜ?」
「何のことかしら」
乱れたペースを取り直して、外のショー会場に向かう。
スカッと晴れた青空と青く澄んだ広いプール。
その広いプールに隣接された待機用のプールには、数頭のイルカが泳いでいた。
「一番前が空いてるじゃん!寧々、濡れるのは平気?」
「嫌、濡れたくない人が多いから中間から後ろばかりが埋まってるんでしょ」
「俺は濡れたいね!」
「1人でびしょ濡れになってたら?私は後ろの方に座るから」