第5章 あの人と出会ってしまった
可愛くはない…のに、なぜか目を惹かれる不思議な生き物。
名前のインパクトもあってか、オジサンが揺蕩う様子をしばらく観ていた。
「…!他の展示も見なきゃ」
「寧々ってば、よっぽどオジサンが気に入ったんだな」
「誤解を生みそうな言い回しね。でも、ごめんなさい。夢中になり過ぎてたわ。次の展示に進みましょう」
「いいんだよ、俺は魚を見てる寧々を見てたから」
「いつでも見れるでしょ」
水族館でしか見られない生き物と違って、同級生の私なら。
「う、うん…っ、そう…っなんだけど!い、いつでも見てていいんだな!?」
「気持ち悪い」
ニヤけている五条くんを置いて、次のエリアへ移動する。
「待てって!」
サンゴ礁エリアを抜けた先には、大小さまざまなクラゲが漂うエリアがあった。
「今気づいたのだけど、夜に来た時とは照明の色やBGMが違うのね。不思議、同じ水槽でも違って見える」
「クラゲって食えんのかな?腹減ったわ」
「今その話?…でも、もう少しでお昼ね」