第5章 あの人と出会ってしまった
「…ありがとう。入館料は私が払うわ」
五条くんより一歩先を歩いて、チケット売り場に向かう。
「寧々ストップ。もうチケットは買ってある」
そう言って五条くんは、2枚組のチケットをひらひらとたなびかせた。
「随分と用意がいいのね」
「それだけ楽しみにしてたってこった。寧々とのデートをな」
「私は…水族館は楽しみ」
「素直になれよ?あと、入館する前に俺と1個約束してくんない?」
五条くんの口から飛び出た約束という言葉。
「私に触らないで」や「俺に惚れること」以外の条件が追加されるのだろうか。
「デートの時は俺が全額出す、約束な」
「それは申し訳ないわ」
「仮に、だ。寧々がこの約束を守らないなら、俺は今すぐ寧々に触る」
なんて不公平な条件なのかしら。
「そんな条件を出すような人「これは条件じゃねぇ。約束だ」
「約束?言葉を変えたところで、その話は呑めない」
「んじゃ、触っていいんだな?」
五条くんは大きな手のひらをぐわっと開き、私の頭スレスレにかざした。