第5章 あの人と出会ってしまった
10時丁度に来たバスに乗って、水族館を目指す。
初めて五条くんと出掛けた時には、行き先を知らずに乗ったけど、今回は目的地が分かってるから…少し、ワクワクする。
楽しみ、水族館が。
決して私が座った2人掛けの席の隣に、鎮座した五条くんとのお出掛けだからじゃない。
「また体を小さくしてるのね」
「当たり前だろ、寧々には同意を得た時以外は触らねーよ」
人が隙間に割って入ることのできない距離で。
それでも私には服の裾ひとつ触れない。
前回も…そうだった。
「でも意外だな。てっきり俺は寧々が1人掛けの方に座ると思ってた」
「そう…ね」
確かに言われてみれば、1人掛けの席もいくつか空いていた。
気づかなかった…?
無意識に2人掛けの席に座っていたようだった。
「この話は前回もしたのだけれど、お金は私が払うつもりよ」
「前回も言っただろ?忘れたのか?好きな子には奢りたいんだよ」
「自分の分だけでも払わせて」
「その気持ちだけで十二分だ。ありがとな」
お礼を言うのはこっちなのに。
五条くんはとても自然に2人分の料金を支払って先に降りた。