第10章 知らない女の子と五条くん
「五条くんから宣言してくれたら楽なのに…」
「「え?寧々…?」」
「えっ、…っえ?」
心の中でぽそりと呟いた一言なのに、どうして声として耳に届いているのかしら。
私だけじゃない、五条くんも硝子も…知らない女の子も…全員が私を見つめている。
驚いたような不意をつかれたような、そんな気持ちになるのはこの場にいる全ての人…、そう、私も含めて。
……だったらなんで、私までもこの状況を飲み込めていないのかしら、なんて思うよりも先に
「ん、んんっ!!」
カフェラテを一気に喉に流し込んでも流れない空気。
苦いはずのコーヒーよりも苦苦しいこの状況の方が数段と上回った。
ミルクの甘味を感じる余地はなくて、ミルクによく似た髪色をした五条くんのぽかんと開けた口から、言葉を放つのがスローモーションになって見えた。
「やっぱり寧々以外に優しくなんて出来ない。『次』は思ったより早く来たな」
なんて優しく微笑むのかしらね。
コーヒーの苦さを、この苦々しい状況を優しく包み込むような笑顔を向けられては、正面切って直視なんて出来ない。
だけれど……いつものように顔を背けてはいけない、そんな気がして。