第10章 知らない女の子と五条くん
「寧々」
そう声をかけたのは、口の端にソースを付けた五条くんだった。
「五条くん、口にソースが付いてるわよ」
「舐め取ってあげるって?寧々は本当に大胆「自分を犬だと思うなら、舐めることくらい簡単でしょ?」
要は自分で拭きなさいってこと。
私が舐め取るわけもないし、ソースをご丁寧に紙ナプキンで拭き取ってあげるわけもない。
「寧々、口開けろよ。前みたいに食べさせてやる」
「ごじょっ「ふーん?食べさせ合いっこしたんだ?私の知らないところで」
隠しきれずにポロポロと落としていった点が1つの線として解を作る。
硝子の頭の中で合点がいったことは間違いなく、そしてその答えも正答であり間違いはない。
「硝子ってば、何を勘違いしてるのよ…ね、ねぇ五条くん?」
「何処までいったか知りたい?硝子」
「ごじょ「そういうのは寧々から聞くから。五条は黙ってていいよ」
私からの「黙ってて」には完全には従わなかったくせに、硝子の「黙ってて」には嬉しそうにニヤけながら
その口元を何とか硬く結ぼうとしているのが見え透いている。
本当は話したくて話したくて堪らない…けど、私が話した方が面白いといった顔を隠す気はない様子。