第10章 知らない女の子と五条くん
「あーん」
口をパカっと開けてみせる五条くん。
あの日水族館で見たペンギンの方が、お行儀が良かったかもしれない。
ペンギン達は自分のものと分かっていて、おねだりをするんだもの。
他人のものを奪おうとはしないわ。
ボス気質の体の大きな子は、他の子の分まで強奪していたけどね。
「はやく」
それにしたって…、おねだりの仕方だって愛らしくて微笑ましいものだったはずよ。
大口を開けて、ここと指差す人とは違う。
「前みたいに食べさせて」
「ーーっ!」
「前…?寧々、それなんのこと?」
一口貰うために開けた口で、硝子以上の爆弾を落とすなんて考えられない…!
さながら核爆弾のように感じる発言に、私は身じろぎをして硝子は反対に「寧々〜?」と食い付いた。
「ひ、一口あげるから黙っててくれる?」
「そういう条件か?」
「いいえ、約束よ」
柔らかい言い方に直して、カレーのかかった柔らかい卵とバターライスを掬ったスプーンを差し出す。
もちろん、予備のスプーンが残っていることを確認してね。
「しょうがねぇ、飲んでやるよ」
五条くんは口元に向けたスプーンに食い付いて、パクッと食べて飲み込んだ。
「甘い、桃っつーか、白桃の味がする」