第10章 知らない女の子と五条くん

「お待たせいたしました。こちら和風スパゲティとオムカレーです」


「あ、ありがとうございます」


窮地に立たされた私を、偶然にも救ってくれたのは店員さんだった。


「ハンバーグはもう少しで焼き上がりますので、少々お待ちくださいませ」


可哀想にも、１番お腹が空いていたであろう五条くんだけがお預けを食らった。


硝子は全員分の料理が揃うのを待たずにフォークを手に取る。


「冷めるの嫌だから先食べてるよ」


まるで私の話への興味も冷めたみたいな言い方をして、くるくると器用にフォークにパスタを巻きつけた。


「寧々、食事は楽しくとりたいでしょ」


「そ、そうね」


今だけは許してやると言った含みを感じる声音。


…でも完璧に興味が逸れたわけではないにしても、話が逸れるのは私には好都合。


せっかくの外食なのだから、今は美味しく食べることだけを…って、


「なぁ、寧々一口くれよ。俺のだけ来ねぇ」


「嫌よ、もう少し待てば良いだけよ」


レモネードは飲み干していたから、五条くんにはお冷しか…あ、お冷も飲み切ったのね。


硝子がお構いなしに食べ進めるから、私も…と思ったけれど、ご飯をねだる子犬のような大男が目の前にいる。


た、食べづらい…わね。