第10章 知らない女の子と五条くん
「そ、それは…」
タイミングだとか切り札だとか、今じゃないとか…。
頭を埋め尽くすのは余計なことばかり。
キッパリ真っ直ぐと自分の気持ちを素直に言えたらいいのに…。
五条くんはレモネードを一気に飲み干し、サングラスをグイッと下にずらした。
そして、あわあわする私に任せてとウインクをする。
「硝子、寧々は人前で惚気るタイプじゃないってよ」
「そうなの?寧々」
「は、恥ずかしいから…!」
さっきの会話と立場が逆だ。
私だけは自分の性格を2人に代弁してもらっているけど…!
「寧々、無理に聞き出そうとしてごめん」
「いいのよ、硝子。言えない私が悪いのだから」
「でもバレバレってのは変わりないかな。寧々明るくなったもん」
「へ…っ、」
話は振り出しに戻る。
「もっと堂々と応援させてよ。友達でしょ?」
「あ…、しょ、硝子…?」
「潔く宣言しな」
圧を掛けるように人差し指をビシッと突きつけられて、逃げ場はどこにも無くて。
ごめんなんて思ってもいない建前すらも取っ払った硝子。
五条くんはメニュー表で顔を隠しているけど、両手がプルプル震えているのが分かる。
もしかして、い、今がその時なの…?
「私は…っ」